ぼくの命は言葉とともにある
著者の方は、盲ろう者(目が見えない、聞こえない)で日本に初めて大学進学(世界初はヘレン・ケラー)、世界で初めて常勤の大学教員となられた方。
盲ろう者となって学校に戻った時に、友人が手のひらに書いてくれたという言葉。
「しさくは きみの ために ある」
私には、盲ろう、という状態自体が想像もつかない・・・という中で、福島先生の言葉と思索の深さにズシンときます。
さまざまな人の言葉も引用されている中で、
命を与えられているということに対して、もっと謙虚にならねばと考えさせて頂きました。
そして、ドキリとしたのが以下の部分
人間は博愛主義者にはすぐになれるのです。「全人類のために」という言葉は誰にでもいうことができます。でも、すぐそばにいる人の困っていることに対しては、案外冷淡になるのです。
この部分もそうですが、著者は非常に多くの書物、特に小説から思索を深められていると感じます。そして、ハードボイルド作品、SF小説、詩・・・等々からも、生きる力をもらう、と。
振り返ると私自身は、最近、すっかり小説の世界に没頭する、ということがなくなり、読書もいわゆる知識を得るための本に偏っていたように感じます。限られた時間の中で何を読むのか、はいつも悩むところではありますが・・・
そして、障がい者の記録や自伝に対して、
自分の境遇に近すぎるとむしろ力をもらえず、逆に自分との「距離」があるからこそ力をもらえる、と言う逆説的な部分がある
という部分も、なるほどと思いました。
-人は苦悩の中で希望を抱くことで、生きる意味を見出せる。
-人は交わりを伴ったコミュニケーションを行うことで、他者との関係性を生み出し、それによって生きている実感が持てるようになる。
味わい深い1冊でした。